研究概要 |
(1) SMC実験の解析:全SMC実験のデータおよびSLAC、DESYのHERMESのデータを含む過去に測られた陽子標的、重陽子、^3He標的のスピン依存構造関数全てに対し小さなχ一領域までをMS、AB両スキームにのってQCD解析で合わせ、第1モーメント(Г_1)を正確に決め、核子内のクォークスピンの寄与、axial charge a_0,a_Sを決め、結合定数α_Sを求め、Bjorken和則、Ellis-Jaffe和則を検定し、QCD適用の是非を評価した。 (2) COMPASS用超伝導電磁石の建設:CERNでの共同研究COMPASSで使用する偏極標的のための超伝導電磁石の製作を完了した。製作はOxford Co.LTDが受注したため、製作のための打ち合わせ、工程段階のチェック、CERNの実験室内の磁石設置台の検討を行ってきた。3月下旬にOxfordにおいて冷却、励磁テストを行い仕様基準を達成していることを確認したのち、4月CERNの実験室に備え付けた。 (3) SAT(Sma11 Area Tracker)の開発:COMPASSで使う偏極標的の上、下流にミューオンビームの入射位置、時間を決める分解能の良い検出器が必要である。そのため0.5mmφの直径のシンチレーションファイバーと多極光電子増倍管(H6568)のくみあわせによるビームトラッカー(SAT)の建設を分担している。そのため、必要と思われるプロトタイプを製作し、時間分解能の性能を評価した。 (4) 偏極標的の開発:標的の開発のため、ドイツのボンおよびマインツ大学において新しいクライオスタットの開発と実験に参加した。5月から10月にかけてマインツ大学ではGDH(Drell-Hearn,Gerasimov sum rule)和則の検証実験を行い、陽子に対する光子によるπ生成断面積のスピン依存性を855,525MeVの電子エネルギーで測定した。 これは世界最初のデータである。偏極標的は凍結モードでの運転が成功し、ブタノールアルコール試料を使い励起モードで80%に偏極させることに成功した。
|