研究課題/領域番号 |
07102010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60111986)
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研究分担者 |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (70237139)
藤田 和生 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (80183101)
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キーワード | チンパンジー / 比較認知科学 / 道具使用 / 文化伝播 / ストループ効果 / 錯視 / 視覚探索 / 人工受精 |
研究概要 |
チンパンジーの知性とその世代間の伝播について、比較認知科学(CCS)という研究の視点からの研究をおこなった。霊長類研究所の研究グループは、1978年以来、チンパンジーの知性にかんする実験的分析をおこなってきた。また、野外でも、アフリカのギニアのボッソウ群の野性チンパンジーについて、主に道具使用と文化伝播を研究対象とした観察と野外実験をおこなってきた。飼育下では、10個体を1群として飼育し、さまざまな角度から知性の実験的研究をおこなった。成果を箇条書きにする。1)チンパンジーに漢字・図形文字を教え、色の名前をこれらの視覚シンボルで表現できるようにした。現在、カラー・ストループ効果(意味情報の処理と知覚情報の処理とが競合する場面)の検討を進行中である。2)幾何学図形の錯視、具体的にはポンゾ錯視について、ヒト、チンパンジー、マカクザル、ハトで比較研究をおこなった。基本的にはどの種でも錯視が生じるが、刺激の提示方向や遠近図的背景の操作を通じて錯視量を測定すると、それぞれの種に応じた変異が認められた。3)視覚探索課題をもちいて、ヒトとチンパンジーの視覚情報処理の類似点と相違点を検証した。4)表情認知、運動する視覚刺激と遮蔽の効果、などその他の視覚情報処理のトピックスについても検討すると同時に、視覚と聴覚のマッチングにかんする実験的研究をおこなった。5)強化の随伴性、選択行動、トークン(代理性貨幣)について、チンパンジーを被験者とした実験的研究をおこなった。6)粘土遊び・手品を見せるといった場面での観察から、ヒトの子どもの認知発達と比較する資料を集めた。7)嗅覚にかんする予備的研究を人工ナッツ法と呼ぶ手続きで検討した。8)屋外運動場に植樹し、活動の時間配分とともに食物選択のベースラインを求め、被食樹の強い選択性が示された。9)社会的場面で、ジュースを人工のうろの中から飲む実験をおこない、道具の「進化」と伝播の過程を解析している。10)こうした実験的研究と平行して、人工受精による新生児の誕生に向けて採血・採精をおこなった。
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