研究概要 |
この研究は、長さ1m程度の土壌に埋もれた物体を検出できる偏波FM-CWレーダ装置を開発し、遺跡探査用の道具に資することを目標としている.昨年度までの研究によりレーダの原形が作成できたので,今年度はそのレーダを使い,大学の構内や実際の遺跡現場で埋没物体の実測を行った.今までの理論結果から,地上に設定するアンテナの最適な高さがあることが実証されているので我々のシステムでは約30cmにホーンアンテナを設定し,探査を繰り返した.その結果,大学の構内の砂地で120cmの深さに埋めた幅30cmの金属板を検出することに成功した.また,検出結果を見やすくするために,レーダで得られるビ-ト信号の微分をとり,その結果を合成開口処理する方法で,深い位置にある物体を強調して表示できるようにした.この手法は,従来問題であった地表面の不要反射を大幅に減少させる効果があると共に埋没物体の検出を容易にする.この成果の意義は非常に大きい.一方,実際の遺跡現場で2回の実験を行った.場所は新潟県小千谷市真人原遺跡(1995.8.19)と新潟県黒崎町の緒立遺跡(1995.9.21)である.真人原遺跡では深さ30cm程度に作物の根による擾乱が検出できた.また,緒立遺跡では比較的電波の透過しやすい土壌であったため,地下70cm位に古墳を構成している石らしきレーダ画像が得られた.この結果は重点領域「遺跡探査」第3回公開シンポジュームにて報告した.今後,偏波と微分信号処理の理論的な検討を加え,さらに有効な埋没物検出レーダシステムに改良し,現場実験を行う予定である。
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