研究概要 |
日本語獲得過程とそれに関わる認知能力の解明を目的とし10,12,15,18,21,24,27ケ月児各10名の縦断研究と4児の語連鎖出現から生産的二語発話に至る縦断研究をおこなった。日本語発達過程の量的言語測度を確立する目的で、子どもの発話データについて、形態素分割の単位を3種の方法でコンピューター入力した。語連鎖の出現から助詞を含む多語発話の発達過程を縦断データでみると、活用形付属語連鎖と分離型二語発話が14-15ケ月に出現し、16-18ケ月で終付属語連鎖、18-20ケ月で格・係助詞が出現した。この格・係助詞出現と同時期に自立語二語が出現し、その後、急激に統語発話が急増していた。これは格助詞の出現が文法の出現を意味していることを示している。認知については、文法出現期に次に生起することの予測、2つのアイディアの結合、主格の意識等、大きな変化が生起していた。18,21,24,27ケ月児の横断データでは18ケ月児は前統語段階におり、21ケ月児で統語発話が増加し、ルールに支配された発話は24ケ月児で大であった。21ケ月児は個人差が非常に大であった。言語と認知(今年度は遊び)との関係をみると、遊びの象徴化の程度では、統語発話数、位置的・意味的一貫性発話組数とも、シンボル合計、そのなかでも属性との偏相関(年齢一定)が高かった。系列化では統語発話数と人形を含む系列遊びととの偏相関、位置的意味的一貫性発話組数と異なったタイプのふり遊びを3以上含む系列遊び数、プランのある遊びとの偏相関が高かった。系列遊びと言語の関係では、遊びが言語に先行する子どもがいた。シンボルを含む遊びは前統語段階以前には出現していなかった。プランのある遊びは不完全生産統語段階と生産的統語段階の子どもに出現した。言語と遊びの結合能力の発達は密接な関連をもっていたが、その出現時期は個人差が非常に大であった。
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