初期言語習得過程についてはまだ十分に確認されていない事が多い。本研究では、特に語彙獲得にかかわる母子の相互作用の分析を行った。日常的な母子のやりとりにみられる言語と非言語的情報の相補的関係が、子ども言語習得において重要であるとの観点から、母子の言語・非言語的ユニットを単位として取り出し、これを分析する試みをしている。母親への子どもの語彙獲得に関するインタビューに基づき、子どもの言語習得の状態を確認すると共に、半構造的場面の母子観察データから子どもの言語産出のコンテクストを明確化にし、さらに母親のインプットとの関連を検討した。13カ月、20カ月の横断データからは、母親のインプットで必ずしも名称指示がなく、事物の機能を提示することが多いことが確認された。また、15カ月から26カ月の縦断データからは子どもの道具的名称の獲得に慣用操作の言語化が先行し、これが習得とかかわることが示唆された。また、両者に共通する結果として、子どもの慣用操作の言語表現と親の擬音語、擬態語の使用との関連性が示唆され、動作による表出と、これの言語化である擬音、擬態語、および動作語の獲得との三者の関係についてさらに検討するとともにモデル化が必要であると考えられた。このため、動作語獲得の先行研究のレビューを行い、動作と言語習得との関連について検討するとともに、この時期の動作のカテゴリ分類をより詳細に検討する作業を進めている。なお、親のインプットとの関連については、データを増やして確認することが必要と思われ、既に収集されたデータについての分析をさらに進めるとともに、ケース数を若干追加する予定である。
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