今年度の研究実績は、平成5・6年度の成果をふまえて、国際私法とウィーン売買条約法の研究をさらに進めたことである。 第1に、国際私法の分野では、まず相続に関するルールの検討を進めることにより、この点における実定法知識の構造を相当程度まで解明し蓄積することができた。不法行為に関するルールに関しては、主として製造物責任の領域について検討を継続した。また、外国法の適用については、昨年度に引き続き、日本法・アメリカ法・ドイツ法についてのこれまでの議論をフォローするとともに、フランス法について詳しい検討をおこなった(後継「11.研究発表」参照)。そのほか、国際的な子の奪い合い問題、渉外的認知の出訴期間制限の問題、渉外的不法行為における損害賠償算定規準の問題、外国判決の承認執行の問題等、国際私法の分野のいくつかのテーマにつき論文、判例評釈等を執筆したが(後継「11.研究発表」参照)、その際にエキスパートシステムとの関連で実定法知識の構造解明に資すると思われるポイントを探し出して蓄積するという作業もあわせておこなった。 第2に、ウィーン統一売買法の分野では、これまでの検討をもとに、条約の適用というテーマについて考察をすすめた。とくに、B・C班の研究会議や吉野教授主催の研究会においては、私のミニ報告をもとに、参加メンバーから、条約適用において当事者の意思が果たす役割・機能等をめぐる活発な議論が出され、今後の研究のための多くの示唆を得ることができた。
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