研究課題/領域番号 |
07206108
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
望月 哲男 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (90166330)
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研究分担者 |
宇佐見 森吉 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (20203507)
亀山 郁夫 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (00122359)
沼野 充義 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (40180690)
浦 雅春 東京大学院, 総合文化研究科, 助教授 (20193956)
井桁 貞義 早稲田大学, 文学部, 教授 (70063807)
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キーワード | ロシア / 現代文芸 / 20世紀 / ポストモダニズム |
研究概要 |
現代ロシアの文学事象(作品・作家・文芸運動など)約30件を共同で分析し、新時代ロシアの社会的・文化的アイデンティティを抽出する作業を行った結果、以下のような観察がえられた。 1)文芸復興/文化の解体:公式的な芸術イデオロギーの破綻から、一挙に多様な芸術理念、表現様式、ジャンルが文芸の舞台に現れ、文化全体を雑色化している。この現象は観点によって文芸復興とも文化の解体・脱中心化とも見える。 2)文化の歴史的位置づけ:ロシア文化史のコンテストに現代文化を位置づける試みも行われている。その際、コスミズムと総称される20世紀初頭のロシア思想、アヴァンギャルド芸術運動、社会主義リアリズム、60年代以降コンセブチュアリズムなどの、興からの目からの性格づけ、およびそれらと現代文芸との比較対象が関心の中心となっている。代表的な視点は文化の交替説で、実用的文芸と自己目的的文芸、リアリズムと実験主義、真面目な文化と軽薄な文化といった対立物が、文芸の表面に交互に現れるというもの。これによれば、現代ロシア文芸は社会的意義を志向する真面目なソ連文芸への反動ということになる。 3)世界文化の中での位置づけ:これに対して現代文芸を世界的なポストモダニズムの文脈で説明しようとする態度がある。それによれば、モダン(近代)に遅れて参入したロシアはモダンの時代を短期間に駆け抜け、一挙にポストモダンの段階に突入した。ソ連文芸自体がすでに、イデオロギーによる現実の構造を志向するという意味でポストモダニズムの初期段階であった。すなわち現代ロシア文芸は、ソ連文芸の本質を極限まで表面化したものに過ぎない。 現代ロシア文化論は上記のような対立した立場の間を揺れ動いているが、文化作品もある意味でそのような文化論のイラストレーションとなっている。 なお以上の研究成果は『スラブ・ユーラシアの変動』領域研究報告輯第16号、21号(1996、1997)に発表されている。
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