1 グルジアは、国家や国民統合にかかわる様々な問題を持っている。その一つにグリジア国内のグルジア人ムスリムをどのようにしてキリスト教徒が国民の大部分を占めるグルジア国家に統合するかと言う問題があり、またグルジア国外のグルジア人をどのようにして統合するかという問題もある。 2 グルジア共和国のアジャリア自治共和国は、旧ソ連の国家では例外的に住民の宗教(イスラーム教)を理由に設置された国である。アジャリア人は、伝統的に親トルコ的であり、この点に関してトビリスィとの関係は微妙である。アジャリア人は、メスヘティ・ジャヴァヘティ州のグルジア人ムスリムの多くが、母語を失ったのに対しグリジア語を母語として保持するが、その理由は社会の家父長的性格にあるとされる。 3 アゼルバイジャン共和国西部のカザタラ地方には、3千5百人程の土着のグルジア人であるインギロ人が住む宗教はイスラーム教とキリスト教である。近年、インギロ人は積極的にグルジア文化を取り入れようとする傾向にあり、アゼルバイジャン当局との対応が注目される。 4 1944年にグルジアのジャヴァヘティ・メスヘティ州から中央アジアに追放されたいわゆるメスヘティ・トルコ人(自称トルコ人)は、グルジア帰還を求めているが、大部分の希望はかなえられていない。その理由は、グルジア側がムスリム・グルジア人の帰国は進めるが、トルコ人の帰国は認めないという立場を採っているからである。これに対しメスヘティ・トルコ人の過半数は、グルジア人であるという帰属意識を持てないでいる。
|