当公募研究の目的は、ロシア連邦における市場経済体制の形成過程とロシア経済の世界経済への統合過程をロシア極東地域に即して調査研究することである。 1995年度前半期の研究においては、1995年3月のハバロフスク地方とサハリン州での現地調査(企業と行政機関での25回の聞き取り調査)で得た知見と統計資料を、固定フォンド構成、固定フォンド稼動価額、工業生産高、消費財生産、投資、小売商品取引高、就業構造などの諸指標に関して分析して、ハバロフスク地方の法律的制度面での国有資産私有化の転換期は1994年であったこと、体制転換過程の非国有カテゴリーの一つである“混合所有"がハバロフスク地方の今後の体制転換過程において決定的な意味を持つことを明らかにした。また生成過程の企業と企業家の類型化を試み、企業指導部の経営マインドの在りようが体制転換期における企業の経営組織と活動領域の選択と設定に反映していることを示唆した。当公募研究の今後の調査研究の作業仮説となる。 1995年度後半期は、ロシア極東諸地域の体制転換過程の地域的特性の比較研究に視野を拡大している。たとえば小私有化の完了を言う場合、商業部面の私有化率はサハリン州の95%からカムチャッカ州の14%までの大きなばらつきがある。生活サービス補給分野の所有構造に地域的差異が形成されつつあるのではないか。 当公募研究は、地域間経済協力の問題点と可能性を探るために、ロシア極東地域とその他の旧ソ連邦諸地域および環境諸地域との経済関係の調査研究を当初から目的に含めている。1995年度は、ホ-チミン市において外貨系企業、輸出加工区、工業団地などを視察した。また、日本での旧ソ連邦諸地域の研究の隙間であるアゼルバイジャン共和国の現地調査と比較研究に従事し、体制転換過程の全体的輪郭と課題、経済協力のあり方を考察した。
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