本研究は、LATEXを利用して日本の古典籍をデータ化し、印刷するための、マクロファイルを作成することを目的とする。 本年度は、次のような作業を行った。 縦書きシステムの決定 LETEXはもともと英語の印刷を前提としたシステムであり、漢字を用い、縦書きにするという仕様にはなっていなかった。そこで、いくつかの日本語LETEXが提案されていたが、本研究では、その中でも、PLATEXというシステムがもっとも一般的に普及していると考え、これを採用することとした。 訓点資料用マクロ・ファイルの作成 日本の古典籍の中で、まず古訓点資料の入力を想定し、そのためのコマンドをいくつか作成、マクロ・ファイルKunten. styとしてまとめた。これは、インターネットを通じて、公開している。このKunten. styには、右ルビ、左ルビ、左右ルビ、双行(二行割り注)、三行割り注等の印刷を可能にするコマンドが含まれている。 「方便智院聖教目録」の入力・印刷Kunten. styを用いたケース・スタディとして、高山寺蔵「方便智院聖教目録」を入力、印刷した。この結果は、「平成七年度高山寺典籍文書綜合調査団」に収められている。この印刷にあたっては、Kuten. styの仕様の他に、ミセケチ、合点等の表記の処理や、目録に含まれる書目番号の自動ふり当て等の機能を実現している。 残された問題として、いわゆる「JISにない漢字」の入出力がある。これについては、当面は切り張り・手書き等で切り抜けるしかないが、将来的にはLETEXのもともとのフォントシステムであるメタフォントを用いて、必要な漢字フォントを作ってしまうということが考えられる。ただしそれには膨大な手間がかかるので、他の適切なプロジェクトを立ち上げることが必須である。
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