平安前期(10世紀中頃)に成立した「歌物語」3作品、『伊勢物語』『平中物語』『大和物語』の使用語彙を、次の4点に重点を置いて研究をしてきた。 ア 各作品間の語彙的な面での類似点と相違点を明らかにする イ それぞれの作品間に有る類似した短編物語の中の使用語彙を数量的・統計的に比較し、各短編物語の語彙的な面での類似点と相違点を明らかにする。 ウ それぞれの作品内の散文箇所での使用語彙と和歌での使用語彙の特色を明らかにする。 エ 平安時代に成立した他の仮名文学作品(『源氏物語』『枕草子』等)と比較することにより、「歌物語」3作品の使用語彙の特色をより一層明らかにする。 その結果、それぞれの使用語彙の文法的性格は、『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』との間で、鮮明な違いを見せた。その違いは、それぞれの作品の散文語彙・和歌語彙においても、全く同じ傾向であった。 そして、その傾向を、同時代の平安仮名文学作品と比較すると、『伊勢物語』『大和物語』は、和歌文学作品(『古今集』など)に近く、『平中物語』は、散文作品(『源氏物語』など)に近いということもわかった。 こうした研究成果を、年度末に報告書にとりまとめる予定でいる。
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