ここ数年、ヤン・バクスター方程式の関数空間上の解である、楕円型R作用素の満たす性質いついて研究ししている。 昨年度、楕円型R作用素がvertex-face対応という性質を持つことを証明し、その後、本年度にかけてこの結果を論文にまとめた。それが「11.研究発表」に記した論文である。したがって、この論文中のほとんどの結果は昨年度中に得られたものであるが、論文末の「Note added in proof」に書いた2つの結果は、本年度になってから得られたものである。そのうちの1つは、incoming intertwining vectorにもう1つパラメータを付け加えることができるということである。これは、後に記す可換な差分作用素族を構成するときに必要となる。また、outgoing intertwining vetorが存在するということは昨年度中までに得られていたが、本年度になってその具体的な形を求められることに気が付いた。これが2つ目の結果である。 これ以外に、楕円型R作用素を退化させて得られる三角関数型R作用素に付随する格子模型に関する研究を桑野泰宏・山田裕二両氏と行った。格子模型の統計力学的取り扱いに習熟していない私にとっては、大変有意義なものであった。そして、楕円型R作用素から可換な差分作用素族が構成できることもわかった。構成方法は野海正俊氏に教えてもらったものである。可換な差分作用素族の構成には別の方法がある。これに関しても簡単な場合には計算することができた。一般の場合についても、計算していきたい。 以上の研究を実行する上で、パーソナルコンピューター(パワーマッキントッシュ8100)とそれに入れた計算用ソフト(マセマティカ)を利用した。このソフトでは簡単な楕円関数も扱えるので、大変役立っている。
|