本研究結果では、外部と内部で200℃以上の平衡温度の差が見られる幌満マントルダイアピルで最もFertileなかんらん岩である斜長石レールゾライトの組織、化学組成の相違を検討した結果、以下のことが判明した。また、近隣のニカンベツ岩体についても比較、検討を行った。 1.幌満岩体では平衡温度の違いによって斜長石の産状が異なり、各々の斜長石は異なった成因から形成された。 (1)平衡温度が比較的低い(初生値950℃以下)ダイアピル外部では斜長石は一部の例外((2))を除いてはザクロ石の低圧での分解生成物である細粒鉱物集合体中に産し、モード組成、化学組成からもサブソリダス反応によって形成したものであることが支持される。 (2)(1)の地域で、角閃石、石英、斜方輝石を伴った微細粒なNa成分に著しく富む斜長石が単斜輝石内部に包有物として産する。これは、水の加わった系で生じたSi成分に著しく富む初期発生メルトからの結晶晶出で形成したものである。 (3)高温部(初生値1000℃以上)では、サブソリダス反応生成物とは明らかに異なる産状の斜長石が鉱物粒界に存在し、粗粒な粒子内部にはmagmaticな類帯構造が見られ、部分溶融マグマから結晶晶出したものであることが支持される。部分溶融メルトが小規模集積したものであるSegregation vcinが野外でも観察される。含水鉱物が希なことからメルト発生はほとんどdryの条件で生じたと考えられる。 2.近隣のニカンベツ岩体は、全岩化学組成、鉱物化学組成、温度履歴の解析から幌満ダイアピルのより熱い内部由来のものと考えられる。また、magmaticな斜長石がネットワーク構造をつくっていること、segregation vcinが卓越することやれらがはんれい岩層に移行することから、メルトの分離がより進んだものであると考えられる。
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