研究概要 |
これまで平成5年度にはC60,C70,C76の、平成年度にはC84、C90の軟X線吸収を測定してきたが、本年度は、高次フラーレンの軟X線吸収分光の範囲をさらに拡大し、あらたに東京都立大学阿知波・菊池グループおよび名古屋大学篠原グループより提供されたC86、C88、C96についての測定を行い、従来の結果と総合的に比べることにより、炭素数依存性を調べることができた。この結果、炭素数の少ないC76まででは軟X線吸収スペクトルが炭素数とともに大きく変化するのに対し、C84以上の高次フラーレンではスペクトル変化があまり起こらなくなることが分かった。 この結果は被占準位構造を反映する光電子分光の結果が炭素数の大きな所でも変化し続けているのと対照的であり、内殻励起子効果によって空準位の特定部分が協調されている可能性を示唆している。 また、本年度に測定した高次フラーレンのうち、C84、C90については、各種異性体の混合物のほか、異性体分離した試料についても測定を行った。この結果、混合物に比べて異性体分離することによってより鋭い吸収がみられ、詳細な研究のためには異性体分離が重要であることがわかった。
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