研究概要 |
リン原子上に不斉中心をもつホスフイン配位子の中で、o-メトキシ基を有する配位子がロジウム錯体を触媒として用いるデヒドロアミノ酸の不斉水素化反応においおて、特に高い不斉水素化能を示すことが報告されている。この高い不斉誘導をもたらす因子として、o-メトキシ基の酸素原子とロジウム金属との弱い配位的相互作用が示唆されている。我々はこの不斉水素化では、配置相互作用よりもむしる立体的な要因が重要であると考えた。この考えを実証するために、メトキシ基と立体的に等価であるが配位能力のないアルキル基をもつ配位子を用いて不斉反応について検討した。モデル配位子として(S.S)-1,2-ビス「(o-エチルフエニル)フエニルホスフィノ1エタンを選び、これをホスフイン・ボランを経由して合成した。この配位を用いたデヒドロアミノ酸の不斉水素化反応では、o-メトキシ基を有する代表的な配位子であるDIPAMPよりも若干不斉水素化能が劣るものの86-93%eeで不斉還元が起こることがわかった。また、同じ絶対配置をもつ配位子は同一の立体配置をもつ還元物を与えることが明かとなった。これらの結果は、o-エチル基はo-メトキシ基と同様な役割を果たしており、不斉誘導におよぼす因子として配位相互作用よりも立体効果が重要であることを示している。 これらの知見に基づいてo-位にメチル基、イソプロピル基等をもつ類似の配位子を合成し、それらの不斉水素化能を調べた。いずれの場合にもDIPAMPとの相関性が見られた。 さらにロジウム錯体の立体構造をDIPAMPのそれと比較するために、X線結晶構造解析を行った。リン原子に結合している芳香環の"フエイス"、"エッジ"の形成は配位相互作用によるものではなく立体効果によることが明らかとなった。
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