酸性から塩基性までさまざまのブルー銅タンパク質(プラストシアニン、アズリン、シュードアズリン、プランタシアン、ステラシアニン、ウメシアニン)の直接電気化学を、カチオン性、アニオン性、疎水性などさまざまのプロモーターで修飾した金電極を用いて行った。活性中心近傍の疎水的な領域を電極方向に配向させるには、プロモーターとタンパク表面との相互作用を調整することによって、すべてのブルー銅タンパク質の直接電気化学を実現できることがわかった。すなわち、等電点が中性付近のタンパクの場合は静電相互作用がタンパク分子の電極表面へのアクセスをアシストするが、等電点が著しく酸性または塩基性に偏っている場合は、むしろ静電反発させたほうが直接電気化学を実現できる可能性が高いことがわかった。以上の知見をもとにして、電子移動速度や熱力学的パラメータをポテンシャルステップ法で求めた。これらの結果は平成8年度に発表済みまたは投稿中である。また、分子量14万のアスコルビン酸オキシダーゼのタイプ1銅(ブルー銅)サイトへの電子の出入りも実現できることを見いだし、これについても、速報として投稿中である。タイプ1銅から、ロングレンジの分子内電子移動反応によって電子を受け取るタイプ2、3銅からなる三核銅センターについては、阻害剤を用いた検討によって、異常な磁気的相互作用していることを見いだした。この知見は将来の分子内電子移動過程の研究に生かすことができるものである。しかし、当初、計画していた、ブルー銅タンパク質にRu錯体を結合して分子内電子移動を行わせる研究は、タンパクの修飾に難航した末、電気化学を試みたが、CuとRuサイトはそれぞれ独立に電極と電子移動を行うことがわかり、現在のところ電気化学レベルで分子内電子移動反応は実現されていないようである。
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