メディエーターを介した酵素電極反応を解析する際、サイクリックボルタンメトリー(CV)がしばしば用いられる。これまではNicholsonらの方法により解析されていたが、基質濃度過剰かつメディエーター濃度微小の場合に限定されていた。そこで本研究では、種々の基質濃度、メディエーター濃度に対応できるシミュレーションを行い、パラメーター決定法について検討した。その結果、基質濃度が低い場合、CV曲線はピークを持つことが示された。またこのような挙動はメディエーター濃度や酵素活性k_<cat>C_Eにも強く依存し、これらの値によってCV曲線の形が大きく異なることがわかった。またミカエリス定数、ターンオーバー数等各種のパラメーターの決定は、酵素濃度、基質濃度、メディエーター濃度を順次変えたときの電流値から行うことができた。 次に酵素固定化電極のシミュレーションを行った。これまでの酵素固定化電極のシミュレーションは、簡略化されたモデルにより計算されているものがほとんどであった。しかし酵素膜内では基質やメディエーター濃度は酵素反応により不均一となるので、厳密なシミュレーションを行うためには酵素膜内での濃度の不均一性を考慮する必要がある。また、これまでは基質濃度過剰、あるいはメディエーター濃度過剰の場合について検討されてきた。そこでこのような場合分けをせず、基質濃度、メディエーター濃度両者に依存した酵素電極の電流値を計算した。その結果、酵素活性の基質の拡散に対する割合であるσ_S値が大きいほど電流‐基質濃度曲線の直線範囲が広いことがわかった。これに対し、σ_M値が大きいほど直線範囲が狭いことがわかった。すなわち、メディエーターの拡散係数が大きい場合あるいは基質の拡散係数が小さい場合に直線性がよいことが示された。
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