申請者はレーザー光を電極表面に照射することによって生じる様々な効果を予想して研究を推めてきた。そのひとつは、比較的出力の小さな連続発振レーザー光を光学断続器により断続光として電極に照射し、電極表面や電極/電解質界面に温度変調場を発生させることである。電極反応の電子移動反応は、温度上昇に対しその標準エントロピー変化の符号に依存して促進あるいは抑制される。このためロック・イン検出法により温度変調に同期した電流を電極電位の関数として測定するとき、得られる温度変調ボルタモグラムは、その系の標準エントロピー変化に応じて極大もしくは極小を半波電位付近に示すことになる。申請者は実際のこのことをフェロ/フェリシアンイオン系及びFe^<2+>/Fe^<3+>系において検証し、さらに逆にボルタEグラムの形から水素吸着波の標準エントロピー変化を正であると見積ることができた。次に、強力なレーザーパルスで電極表面をアプレーションし表面を更新し活性化することを試みた。アブレーションを数秒間隔で起こし電極表面を更新しながら電流-電位曲線を測定する方法(レーザーアブレーションボルタンメトリー)を提案し、滴下水銀電極によるピ-ラログラフィーの利点を固体電極に対しても導入することができた。これを用いて、従来不可逆な電流-電位曲線を示すL-アスコルビン酸や糖などの電流-電位曲線を改善し、これらの電極反応をよりよく理解する道を切り開きつつある。
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