研究概要 |
分子状態素を酸化剤に用いて各種のエポキサイドを合成する反応を開発することは現代化学の重要な一課題である。本研究では電解還元(陰極還元)によって分子状酸素の活性化を行い、発生した酸化剤によってエポキシ化反応を達成し得る反応系を創成することを目的としている。平成6年度はシクロオクテン、バナジウム錯体VO(acac)_2の共存下で分子状酸素を電解還元すると電流効率75%でエポキサイドが得られることを見いだしたが、本年度は更に次の成果が得られた。 1.バナジル錯体の配位子として3-メチル-2,4-ペンタンジオンを用いるとエポキサイド生成の電流効率が89%まで向上した。 2.用いたバナジル錯体に対する生成したエポキサイドのモル比は0.8〜1.5であり、錯体は反応中に不活性化する。 3.ESR測定によりバナジル錯体中のバナジウムの原子価は、エポキシ化の進行に伴い4価(活性型)から5価(不活性型)へ変化する。 4.電解還元あるいはアスコルビン酸などの還元剤によってバナジウムの原子価を5価から4価へ再生できるが、反応活性は復活しなかった。 5.バナジウム錯体VO(acac)_2をポリマー(クロロメチル化ポリスチレン)上へ固定化するとこの失活が抑制された。 6.cis-スチルベンのエポキシ化で生成したエポキサイドのcis-体とtrans-体のモル比は1:12であり、ラジカル的反応であるかのようにみえるが、ラジカル捕捉剤(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)の添加による反応抑制は顕著でなかった。
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