研究概要 |
本研究においては、有機化合物の電極反応において、酵素類似機能を有する新しい型のメディエーターの開発を目的として、以下の三種の酵素モデル反応系について検討した。 1.ガラクトースオキシダーゼのモデル反応 本酵素はガラクトースの水酸基をアルデヒドに酸化する反応の触媒となる。本モデル系では、電気化学的に生成する高原子価の銅を用いるアルコールの間接電解酸化を試みた。配位子としてトリエチレンテトラミン(Trien)を共存させた場合の銅(II)のボルタモグラムには、銅(III)の生成と推定される酸化ピークが観測された。この領域でアルコールの定電位酸化を行うと、銅(II)とTrienが共存するときに対応するアルデヒドが効率良く得られることを見い出した。 2.ケルセチンジオキシゲナーゼのモデル反応 前年度は、塩化銅などの銅塩をメディエーターとするスチレンの酸化的開裂反応について検討した。酵素の中心金属である銅の代りに塩化鉄(III)を用いて反応を行うと、塩化銅よりも高収率で開裂生成物であるベンズアルデヒドと鉄(II)が生成する事を見い出した。しかしながら酸素存在下では鉄イオンの再生が効率良く進行しないため、鉄をメディエーターとして使用するためには、鉄イオンの再生を酸素を含まない条件下で行う必要がある。 3.チトクロームP-450のモデル反応 チトクロームP-450は一原子酸素添加反応の触媒となる重要な酵素で、その活性中心は鉄-ポルフィリンである。これまでの研究ではアクティベータ-として酸無水物が用いられていたが、本研究では、酵素系と同じくプロトンをアクティベータ-とするモデル反応について検討した。鉄-ポルフィリン錯体をメディエーターとし、酢酸をプロトン源として酸素存在下でN, N-ジメチルアニリンの酸化を行うと、エタノールを溶媒とした場合にモデル基質の酸化的脱メチル化反応が効率良く進行することを見い出した。
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