研究概要 |
天然ヌクレオシドの擬似化合物(非天然ヌクレオシド)がヌクレオシド系の抗ウイルス剤として開発されていることは良く知られている。その最も有効な手段として糖部の変換(非天然型の糖を用いる方法)が考えられる。昨年度、本重点領域研究で硫黄原子を有するチオリボース誘導体を糖部とする一連の4'-チオリボヌクレオシドの合成を試み、電解反応を駆使して4-チオリボースとして、テトラハイドロチオフェン誘導体と1,3-オキサチオラン誘導体の2種の合成に成功した。それぞれ、スルフィドの電解アセトキシ化を鍵反応として用いることによって初めて合成可能となった。本年度は、このようにして得たチオリボース誘導体を用いて、約20種の新しい4'-チオリボヌクレオシドを合成した。また、上記合成過程でα-アセトキシスルフィドにBF_3・OEt_2存在下、トリメチルシリルシアニドを作用させると、α-フェニルチオアルカンニトリルが収率良く得られることも明らかにし、この反応を用いることによって数種の新規4'-チオリボヌクレオシドの合成を可能とした。以上、本重点領域研究による新規電解反応の開発とその応用によって、抗ウイルス活性の期待できるヌクレオシドの合成を完成させることが出来た。現在、合成化合物の生物活性を、3ケ所の研究所で別個に試験中である。将来の新薬の開発に向けて何らかの知見が得られるものと思われる。 また、ビニルスルフィドの電解酸化によってα-アセトキシケトンあるいはその等価体が得られることを見出した。スルフィドが極めて容易に得られる硫黄化合物であるから、このように電解反応を用いて、スルフィドを合成に有用な種々の官能基に変換できることは、電解反応の特異な反応性とその合成反応としての有用性を示すものである。
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