研究概要 |
多様な化学変換が期待されるセレノケテンやニトリルセレニドに関する研究は極めて少ない。本研究では、これらヘテロクムレンの発生・捕捉の検討をした。 1.アルキニルプロパルギルセレニドの熱反応 既知の方法により合成したアルキニルプロパルギルセレニド1をベンゼン還流下で反応させたところ、相当する5、10-ジセレナジスピロ[3、1、3、1]デカ-1、7-ジエン骨格を有するジセレネタン4をシス-トランスの混合物として得られた。ジセレネタン4の前駆物質を捕捉する目的で2、3-ジメチル-1、3-ブタジエン存在下で1を加熱したところ、2-メチレン-3-シクロブテン-1-セロン3とジエンとの付加物5が好収率で得られた。従って、4は3の[2+2]環化付加により生成する事が明かとなった。また、4とジエンをキシレン中で還流しても得らることより、4はレトロ開裂し、セロン3を与える事も判明した。そこで、セロン3の前駆物質を捕捉する目的で、1とジエチルアミンをベンゼン還流下で検討したところ、相当するα、β、γ、δ-不飽和セレノアミド6が得られ、6は1、2-プロパジエニルセレノケテン2のアミン付加物と考えられた。以上の結果、アルキニリプロパルギルセレニド1は熱反応により、[3、3]シグマトロピー転位を起こし、セレノケテン2を与える事が明かとなった。 2.ニトリルセレニド発生の試み ニトリルスルフィドの発生法に準じ、ArCH_2NH_2、SeCl_4,CH_3COOAgの系に親ジエンとしDMADを加え反応させたところ、ニトリルセレニドとの[3+2]付加物ではなく、セレナジリンとの付加物と考えられる相当する1、3-セレナゾールが得られるのみで、ニトリルセレニド発生の確認は実現していない。
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