研究概要 |
1.メトキシ架橋ビス(シリレン)鉄錯体(η-C_5Me_5)(OC)Fe{(SiMe_2)…OMe…(SiMeOMe)}は,Fe-Si-O-Siキレート環に対してη-C_5Me_5配位子と末端OMe基がsynかantiかによって2つの幾何異性体が存在する。これらの異性体間の熱的変換反応について,温度可変NMRスペクトルを用いて研究し,2つのケイ素が2つのメトキシル基で架橋された中間体を経由する機構を提案した。 2.三重項基底状態を持つ初めてのシリレン架橋鉄二核錯体Cp_2Fe_2(μ-CO)_2(μ-SiR_2)(R=かさ高いアリール基)を合成し,その構造,磁気的性質および生成機構を明らかにした。 3.非対称なホスフィド架橋鉄二核錯体(η^5-C_5Me_5 )Fe_2(CO)_4(μ-CO)(μ-PPh_2)と幾つかのジヒドロシランおよびヒドロジシランとの反応によってシリレン架橋錯体が生成すること,およびその際にケイ素上の置換基の再分配が起こることを見出し,この反応に対してシリル(シリレン)錯体中間体を経由する機構を提案した。 4.キレート配位子〔HMesSiCH_2CH_2PPh_2〕を含むクロロ(ヒドリド)イリジウム(III)錯体が,光定常状態では2つの幾何異性体の29:71での混合物となるが,加熱するとその少ない方の異性体に完全に異性化することを明らかにした。また,光定常状態での多い方の異性体については,X線結晶構造解析によりその構造を決定した。 5.分子内塩基で安定化されたシリレン錯体[(η-C_5H_5)Fe(CO)_2=SiMe{2-(Me_2NCH_2)C_6H_4}]PF_6を,Ph_3CPF_6によるシリル基上の水素の引き抜きという新しい反応によって初めて合成し,X線結晶構造解析によりその構造を決定した。
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