高機能を有する次世代の高分子材料の開発には、重合の素反応の高次・多重制御を可能にする新しい方法論の開拓が必須である。我々は、金属ポルフィリン錯体を開始剤とするリビングアニオン重合系に、それとは立体的に直接反応しない嵩高いルイス酸を添加すると、このルイス酸がモノマーを配位活性化し、分子量の揃った様々な高分子を極めて短時間で与えることを見いだした。本研究では、この新しい概念による高分子合成反応の精密制御を目的としている。 本年度は、遷移金属ポルフィリン錯体に関する検討を重点的に行った。その結果、オキソチタニウム(IV)ポルフィリン錯体にトリエチルアルミニウムを添加し、スチレンを加えると、60℃においてスチレンの重合が起こり、ある条件下では分子量の揃ったポリマーが得られることがわかった。この場合、特に全置換ポルフィリン錯体を用いると、重合が100%まで進行した。生成ポリマーを単離し、NMRを測定したところ、ポリマーの末端にトリエチルアルミニウム由来のエチル基が存在することが分かった。さらに、反応系のNMRから、チタンポルフィリンは常磁性(還元)になっていることが分かった。また、マンガンポルフィリン錯体はエポキシドの重合反応を引き起こし、分子量の揃ったポリマーを与える。この系にスチレンを加え、60℃に加熱すると、スチレンが重合し、ポリエーテル-ポリスチレンブロック共重合体が生成した。マンガンポルフィリン錯体とトリエチルアルミニウムを組み合わせた系からは分子量分布の揃ったポリスチレンが得られたが、重合反応が途中で止まる(中心金属の交換)ことが分かった。
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