抗ガン性生物質ブレオマイシン(BLM)金属錯体によるDNA切断の分子認識機構の解明のためには、コバルトBLMの反応性を鉄BLMと比較や構造を解析が必要であると考え、今年度は反応機構と分子認識について以下の点について調べた。 1)コバルトBLMによる水酸化反応におけるH_2^<18>の取り込み 鉄BLMによる反応では生成する4'位ラジカルは酸化されカチオンとなりそこにH_2Oがとりこまれることが示されている。コバルトBLMによるDNA切断反応をH_2^<18>O存在下で行ない生成物の質量分析をおこないH_2^<18>Oがとりこまれることを見い出した。 2)コバルトBLMによる効率よいエポキシ化反応 我々はデオキシリボース4'位酸素が炭素になったデオキシアリステロマイシンをBLMの反応サイトに導入すると、コバルトBLMによる反応で、エポキシ体が主生成物として得られることを見い出した。いったん生成した脱水素体がエポキシ体となったことが明らかとなった。 3)コバルトBLMの錯体の構造決定 下記に示すようにBLMには配位可能な5つのN原子があり、2つの金属配位構造をとりうることができ、結合モデル作成には錯体の構造をまず決める必要がある。糖鎖のないコバルトデグリコBLMを用いて、1H NMRによる構造解析を行った。1H NOESYスペクトルにおけるクロスピークの存在から配位構造を決定した。 4)BLMによるDNA分子認識機構の解明 光照射下コバルトデグリコBLMにより1つのサイトで選択的に水酸化がおこる4種の6量体を用いて、複合体について^1HNOESYとTOCSYを用いた構造解析を行っている。現在のところ、すくなくとも2つの結合様式が存在することが明かとなった。
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