研究概要 |
1.光学活性なジエン鉄カルボニル錯体の合成研究 分子対称性を有する2,4-ヘキサジエン-1,6-ジアール鉄カルボニル錯体に(S)-(+)-ジフェニル(1-メチルピロリジン-2-イル)メタノールを不斉触媒としてジエチル亜鉛を作用させると、分子内に存在する2つのアルデヒドの一方で選択的に不斉アルキル化が起こり(官能基選択性>90%de)、高い不斉収率(>98%ee)で(S)-2級アルコール体が得られることがわかった。 2.光学活性なジエン鉄カルボニル錯体を用いた生理活性物質の不斉合成研究 (1)前年度報告したジエノン錯体およびアザトリエン錯体に対するジアステレオ選択的な求核付加反応を光学活性なジエン鉄カルボニル錯体に応用した。光学活性な(Z)-ジエノン錯体に対し、メチルリチウムを用いることにより(Z)-付加体を、またメチルグリニャ-ル試薬を用いることにより(E)-付加体をそれぞれ選択的に合成し、(-)-および(+)-フロンタリンの形式合成に成功した。 (2)光学活性なアザトリエン錯体へのベンジルセリウム試薬の立体選択的求核付加反応で得られた付加体をヨウ素-ヨウ化カリウムによる分子内ヨードシクロカルバメーション反応により可能基化し、ジペプチドイソスターの合成に成功した。 3.ジエン鉄カルボニル錯体を可動型不斉発現素子として用いた生理活性物質の不斉合成研究 前年度、リン酸エステルを脱離基に持つシアノヒドリン錯体から(E,Z)-錯体の立体選択的合成が可能であることを報告した。今回さらに条件検討を行った結果、ルイス酸としてTrClO_4を用いれば(E,E)-錯体が立体選択的に合成できることを見いだした。そこでこれらの知見をもとに軟サンゴより単離されたアミノアルコール体の不斉合成を検討し、O-メチル誘導体の合成に成功した。
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