研究概要 |
本重点研究の最終年度にあたる本年度は希土類金属アリル及びアレニル錯体の新規合成及びその求電子剤との反応について研究し,次の成果を得ることができた。 1.サマリウム(III)η^3-アリル錯体の合成及び反応 サマロセン(C_5Me_5)_nSm(thf)n(n=0or2)を0.5当量のアリリックベンジルエーテルと室温で反応させると、C-O結合が切断され,π-アリルSm錯体(C_5Me_5)_2Sm(η^3-allyl)がアルコキシ錯体C^*_P_2SmOBnと共に高収率で生成することを見いだした。次に、このようにしてin situに合成したπ-アリル錯体にシクロヘキサノンを反応させるとanti体のホモアリルアルコールが優先して得られ,反応がジアステレオ選択的に進行することが明らかになった。また,トリメチルアセトアルデヒドの反応ではanti体のみが得られた。一方,ジメチルフェニルシリルクロリドとの反応では,π-アリルSm錯体の置換基の少ないアリル炭素で選択的に反応が起こり,相当するアリルシランを与えるという興味ある結果が得られた。 2.サマリウム(III)η^3-アレニル錯体の合成及び反応 さらに,サマロセンC^*_P_2Smをプロパルギルエーテルと反応させるとアレニル錯体C^*_P_2-Sm(η′^3-allenic)がC^*_P_2SmOBnと共に生成することを見いだした。次に,これらのアレニル錯体とシクロヘキサノン及びジメチルシリルクロリドの反応を検討した結果,1級エーテルより合成したアレニル錯体は,シクロヘキサノンの反応の場合はアレニルアルコールを主生成物として与えるが,2級及び3級エーテルより合成したアレニル錯体はともにプロパルギル体を与え,反応の位置選択性は,求電子剤の性質よりは,出発エーテルの種類によって決まることが明らかになった。
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