研究概要 |
本研究結果は以下の三つにまとめられる. 1.dppm(ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)を配位子とする二核パラジウム錯体の光化学反応. [Pd_2(dppm)_2]と1,2-ジクロロエタンが光化学反応してエチレンと[PdCl_2(dppm)_2]を与える反応は以前報告したが,さらに光照射を続けたときの反応生成物について検討した.この生成物は光照射をやめるともとの1価錯体に戻ってしまうという興味深いものであるが,各種の反応条件での速度解析,光照射中の^<31>P-NMRの変化等から,4核錯体の生成が提案された. 2.不斉なBINAP(2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル)を有する新規白金錯体[Pt(BINAP)_2]を合成. 上記錯体を新たに合成し,構造解析を行った.この錯体は可視域に強い吸収帯を有し,室温にて溶液中でルミネッセンスを発する.分子軌道法による解析の結果,本化合物はMLCT励起状態から蛍光を発することが推測された.また,光照射下において有機ハロゲン化物と光化学反応することが確認され,有機ハロゲン化物を消光剤として添加した時の発行寿命の減少の具合を解析し,この消光の機構を考察した. [Pd(PPh_3)_4]を触媒として用いる光化学反応;クロロベンゼンからのクロロビフェニルの生成. クロロベンゼン中でこの錯体と亜鉛末,そして有機塩基を添加して光を照射することでクロロビフェニルがパラジウム錯体の最高30倍生成することが確認された.クロロビフェニルの3つの異性体が反応条件にかかわらず,o:m:p=6:2:1で生成すること,ラジカルスカベンジャを添加すると反応が阻害されることから,ラジカル機構が考えられた.
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