研究概要 |
ジルコノセン錯体のシクロペンタジエニル(Cpと略す)基を修飾し、金属反応場の電子的、立体的環境の変化と触媒活性の相関を明らかにし優れた重合触媒を設計することを目的として研究を行った。 1.Cp基とフルオレニル(Flu)基をMe_2C基で架橋したCs対称のジルコノセン錯体(1)はプロピレンのシンジオタクチック重合触媒になることが知られている。本研究ではCp基とテトラメチルシクロペンタジエニル(Me_4Cp)基をMe_2SiあるいはMe_2Cで架橋したCs対称のメタロセン錯体とCp基と2,3-ジメチルインデニル(Me_2Ind)基をMe_2SiあるいはMe_2Cで架橋した偽Cs対称のメタロセン錯体を合成しそれらのX線結晶解析を行い、シンジオタクチック重合能と構造の相関をしらべた。Me_2C架橋錯体がMe_2Siのそれより優れたシンジオ重合特性を持つのは前者の方がbite angleが小さく、ジルコニウムが前面に押し出され、プロピレンの配位に際してCp置換基との直接的な立体障害を回避できるためと結論した。また同様に、FluがMe_4Cp基のものより優れているのはジルコニウムとの結合距離が前者の方が長く、立体障害が少なくなるためと考えられ、Me_2Ind基の使用はCpとFlu基の中間程度の立体規則性のシンジオタクチックポリプロピレンを与えることを明らかにした。 2.Cp基とMe_4Cp基をMe_2Si架橋したCs対称ジルコノセン錯体のCp基にメチル基やt-ブチル基を導入すると優れたアイソタクチック重合触媒に変換されることを見いだし、1を同様に修飾した場合との差異について考察した。 3.1、2-あるいは1、3-位にt-ブチル基とメチル基をもつ無架橋ジルコノセンジクロリド錯体を合成し、それぞれメソ体とラセミ体を単離し、ジメチル錯体を誘導し構造を決定した。プロピレンの重合を行いCp環の回転障害に起因する立体制御能の比較を行った。
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