研究概要 |
(1)カルボニル化によるトリエステルの合成と応用 エステルで活性化された炭酸プロパルギルエステルはトリエステルを効率良く与える。この反応はアレンジエステル,3員環パラダサイクルを経て進行すると考えられる。これまで通常の基質ではアレンジエステルを単離することは困難であったが、立体的に嵩高い炭酸プロパルギルエステルに反応性の低いベンジルアルコールを反応させた場合には、アレンジエステルを単離できることが判った。このカルボニル化反応を有機合成的に展開する試みの中で、ジベンジルメチルエステルを水素添加することによってβ-ケトエステルが効率良く得られることを見い出した。しかし、トリメチルエステル体ではβ-ケトエステルは全く得られない。 (2)連続カルボニル化-Diels-Alder反応の開発 炭酸プロパルギルエステルのカルボニル化反応で生じるアレンエステルは、反応性に富み、興味深い合成的展開が期待できる。そのひとつに連続カルボニル化-分子内Diels-Alder反応がある。中間に生成するアレンエステルは電子密度の低いジエンとして、末端のオレフィンは電子密度の高いジエノフイルとして作用する。末端のオレフィン部を更に電子密度を高めたメチルエノールエーテルにすると、分子内Diels-Alder反応は室温で進行し、効率良く双環性化合物を与える。このときリン配位子は、dppfが最も優れている。単座配位子では反応が進行しない。メチルエノールエーテルのE/Z比はジアステレオ選択性に反映される。
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