溶融Al-15%CuおよびAl-33%Cu-1.2%Mg合金を85%Al_2O_3-15%SiO_2連続繊維束へ圧入して一方向凝固させ、共晶組織の分布と繊維体積率との関係を調査した。共晶はアルミナ繊維の周囲に晶出する傾向があり、共晶は繊維体積率の多い領域に多く分布する傾向があることを見い出した。共晶組織とアルミナ繊維の接触部は破壊の起点となる可能性が高いのでその制御法を確立するため、温度分布および溶質元素の分配過程についてコンピュータシミュレーションを行い、組織形成過程を研究した。まず、複合体内の温度分布を直交座標系・直接差分法による2次元モデルを用いて解析した。熱伝導率および比熱の差から繊維はマトリックス金属よりわずかに高温状態にあり、温度差は繊維40vol%の領域において0.1℃であり、これは繊維近傍での凝固を数μm遅らせる原因となる。次いで、平衡分配係数、溶質拡散係数を用い、初晶デンドライトの形状を仮定して溶質元素の2次元拡散シミュレーションを行い、初晶先端近傍における溶質元素の濃度を繊維により制限された領域とバルクの場合について解析した。拡散場がデンドライトアーム間隔の1/2に制限されると、Al-15%Cu合金の結晶先端の溶質濃度はバルク領域における溶質濃度より0.2%高くなり、約250μmの凝固の遅れを生じさせ、これに伴う溶質濃度分布の変化が共晶組織を増加させることを明らかにした。以上のような凝固過程におけるミクロ的な熱および溶質元素分布の解析に基づいて、マトリックス合金と無機繊維の物性値から凝固組織を推定することができ、素材の選択により複合材料の組織制御を行うことができる。
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