研究課題/領域番号 |
07221101
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新美 成二 東京大学, 医学部(医), 教授 (00010273)
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研究分担者 |
世木 秀明 千葉工業大学, 工学部, 講師 (60226636)
今泉 敏 東京大学, 医学部(医), 助教授 (80122018)
桐谷 滋 東京大学, 医学部(医), 教授 (90010032)
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キーワード | 対話 / 無声化 / 難聴 / 調音 / 調和結合 |
研究概要 |
対話音声は書き言葉と違って多くの状況要因に応じて変化する。しかし、従来の研究ではある特定の被験者に対する実験室的発話が主な対象であったためか、発話の状況依存特性は必ずしも明かにされていない。本研究では、東京方言と大阪方言における無声化を解析し、対話における音声の言語的・音響的多様性と規則性を検討した。無声化を音韻規則とみなす立場からは、東京方言では無声子音に挟まれた高舌母音は無声化し、大阪方言ではしないと報告されている。この「規則」は対話においても規則的に適応されるのか、それとも状況依存的に変化するのかを、、難聴学級教師や医師、言語治療士が難聴児・者に対して語りかけた音声や朗読音声を解析し、以下の結果を得た。1)両方言とも難聴児・者に対する音声ではモ-ラを延長させる傾向がある。2)無声化はモ-ラ長に強く制約される現象であり、モ-ラ長が短ければ短いほど上昇する特性を持つ。3)モ-ラ長と無声化率の関係を比較すると、平均的には難聴児に対して有意に無声化率が低かった。4)会話相手や会話対朗読など状況因子に応じて、モ-ラ長と無声化率の関係は変化させ得る。難聴学級の教師は難聴児に対して積極的に無声化率を下げる様な調音をしていた。大阪方言の医師、言語治療士でも同様であった。5)ただし、その変化には一定の規則があり、日本語の音韻的制約上無声化し易い(すべき)モ-ラはたとえ難聴児に対しても無声化率は比較的高く保たれる。 以上の結果は、話者は目的に応じた話法を採択すること、難聴児・者に対する語り掛けにおいては音韻的制約上許容される範囲で無声化を防ぐような積極的な調音を行うこと、音響的に測定された無声化は音韻的制約と音声的制約(調音結合、有声化動作の無声化動作による「被覆」)と、話者の状況依存的調和意図との相互作用によって決定されることを示唆している。
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