平成7年度は音声対話形式によるCAIシステムの構築の実現を目指して以下の様な研究を推進した。実際に語学教育の現場において音声情報処理技術を応用したソフトウェアをインストールしたパーソナル・コンピュータを導入した特別教室で、音声対話主体の語学教育を試み、学生の評価も求めた。従来のモノローグ主体の語学授業から音声対話主体に切り換えたことに対する学生の満足度は非常に高かった。これは一方通行の語学教育よりも音声対話主体の教育の方が言語の本質であるコミュニケーションの成立をより実感できたことにも起因すると思われる。また、これと平行して、学生の学習意欲を高めるために、目的指向のタスクを設定して、実際に会話が行なわれる場面状況を設定して、役割分担を行ない、書き言葉ではなく、日常会話で使われる音声言語の習得を目的とした語学教育を試みた。この点に関する学生の評価も高かった。学生は抽象的な状況よりも自分が実際に体験可能な実場面の具体的な状況設定に学習意欲をそそられたものと思われる。学生の各ペア-の音声対話の発話はコンピュータに入力を指定することが可能で、ネイティブの発話との比較をコンピュータの画面上で各自が確認することができるような仕組みになっている。スペクトログラム機能を利用した分析では、各音声の継続が時間上でのパタンの変化やフォルマント(ホルマント)構造の変化等を視認することができる。これによって、子音連続への不要な母音の挿入や/r/と/l/の誤りなどを自分の目で確認することができるようになり、発話矯正が容易になった。基本周波数分析機能の利用では、ネイティヴの発話のイントネーションとの比較によって、自分の発話の欠点を認識し、自然なイントネーションやリズムの習得が従来に比べてずっと容易になった。
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