研究概要 |
生体高分子結晶の格子欠陥の情報を得るためにはX線トポグラフ法が最適である。放射光を用いたラウエ法は短時間に多数の回折スポットの情報が同時に得られるため最強力な方法である。しかし放射線損傷を避ける有効な方法が見出せず,実用化しなかった。本研究で水フィルターの利用で損傷を減少し,初めて結晶内部の情報が連続してX線トポグラフ法で得られることができた。その結果,成長時あるいは結晶のハンドリング中に入った格子欠陥を放射線損傷により生じた欠陥と識別できるようになり,格子欠陥と成長条件の関連の系統的な研究が可能になった。実験はPFのBL-15Bで行った。水フィルターは5mm厚,アグファD2,D4フィルムを使用,30〜60秒露出で,数枚のラウエ写真が連続撮影可能であることを見出した。 本研究では成長条件を変えて作製した斜方晶,正方晶の卵白リゾチーム単結晶を試料とした。7年度の2回のマシンタイムですでに1)成長が遅い場合の方が良い結晶が得られる2)正方晶の方が良い結晶が成長する,3)容器に接した部分は歪みやすい,4)モザイク構造に基ずく結晶全体に均一に分布する格子歪が存在する,5)螺旋転位と同種の格子欠陥が存在することである。などの結果が得られた。 これらの結果は7年秋,日本物理学会,生体高分子結晶成長国際会議(広島)で発表,さらに8年春の日本物理学会でも報告される。
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