アスパラギン酸アモノ基転移酵素(AspAT)はサブユニット2個からなる2量体で、サブユニットは大小2つのドメインからなる。基質(阻害剤)結合時に小ドメインが大きく動き活性部位を閉じる。これをopen⇔closed変化と呼び、触媒反応にとって極めて重要である。大腸菌AspATは結晶状態を維持したままこの変化を起こすので、ラウエ法による時間分割構造解析の可能性がある。これまでどのような結晶がラウエ法によるデータ収集に適しているかを、野生型AspATと変異型AspATについて調べた。これまでの結晶は、結晶毎にラウエ回折斑点の形状が異なり、データとして使用できる結晶はまれであった。この問題を克服するために、できるだけ低濃度の硫安から高品質結晶を得る条件をhanging drop法により検索した。まず、平衡状態(reservoir溶液は40%飽和硫安)に到達したら、種結晶を入れる。入れるとすぐに、多数の結晶が析出する。次に、reservoir溶液として30%飽和硫安を用い、平衡に達したら40%飽和硫安から得られた結晶を種結晶として入れる。これでは種結晶は溶けてしまうので、種結晶を入れると同時に、reservoir溶液を35%飽和硫安に置換すると、少し溶けた種結晶が成長する。この方法は再現性があり、一個の結晶が得られ、かつ高品質でラウエ実験に適していた。ラウエパターンはきれいであるが、指数付けにまだ問題がある。また好熱菌AspATの結晶化を行い、重原子同型置換により、初期位相の決定に成功し、現在、N末端の30残基を残して3次構造を決めることができた。好熱菌は安定で大腸菌AspATよりラウエ実験に適していると考えられ、この酵素についても動的解析を試みる。
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