研究概要 |
本研究は、ファンデアワールス・エピタキシ-法によって作製された層状物質による超薄膜ヘテロ構造表面の、走査型トンネル顕微鏡(STM)像に現れる、長周期モアレ変調構造や、金属吸着層状物質表面に特異に現れる電子変調構造の微視的解明を目標としている。 モアレ変調構造については、試料温度によるSTM像の変化を調べるために、100Kから1200Kまで試料温度を変えることの出来る超高真空STM装置を導入し、立ち上げ中である。完成し次第すぐに各ヘテロ成長試料の観察を始める予定である。 アルカリ金属吸着表面では、LiからCsに至るアルカリ金属をMoS_2,MoSe_2,MoTe_2各基板に微量吸着しSTM観察を行った。その結果全ての組み合わせに於いて同様なサンプルバイアス電圧依存性を示す変調構造が観察された。即ち空状態像では直径2〜3nmの暗点、占有状態像では同じ場所に馬蹄型の輝点構造が観察された。アルカリ金属間でのイオン化エネルギー、イオン半径の差、及び基板半導体の格子定数、バンドギャップの差にもかかわらず同様な変調構造が全ての試料で観察されたことから、吸着アルカリ金属は基板とは反応やインターカレーションはせずに、表面に留まって単にイオン化しているだけと考えられる。バイアス依存変調構造は吸着イオン周辺に局在する負電荷によって局所状態密度及びバンドの曲がりが変化することで発生していると考えている。現在その詳細について理論的研究を行っている。
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