・シリコン表面窒化過程の観察 Si(111)表面に窒素化合物を高温で反応させると表面が窒化されるが、その形成初期に原料に依らない固有の構造が現れることが知られている。本年度、われわれはこの構造の原子構造、電子構造とその形成プロセスを調べるため、トンネル顕微鏡を用いてアンモニアガスによる窒化反応の観察を行った。シリコン表面を800度の高温に保ちアンモニアを暴露すると水素原子は直ちに気相中に脱離していく。この時窒素原子は7x7構造のダイマー列をはさむ2つのセンターアドアトムと選択的に結合することが分かった。また、暴露量を増やすと表面が窒化膜単原子層の構造と考えられている8x8構造になることをはじめて確認した。現在、擬似STS法により窒素原子の吸着サイト、吸着様式を検討中である。 ・ニッケルシリサイド成長プロセスの観察 Si(111)面のニッケルシリサイド薄膜の成長プロセスを温度及び吸着量を変化させながらトンネル顕微鏡により詳細に調べた。従来この系ではニッケルの低吸着量において"1x1"という相が存在することが知られていたが、本研究でのトンネル顕微鏡観察によりこの複雑な構造を初めて原子レベル明らかにした。また、アニール温度を高くするに従ってシリサイドが形成されるが、その表面は2つの異なる構造(√<3>x√<3> 400C、2x2 600C)を呈することを明らかにした。詳細なSTM観察により、これら2つの相はニッケルのシリコンバルクへの拡散とともにシリコンとの界面の結合状態が異なるため現れていると考えられる。
|