研究概要 |
(1)まず,固液系における蒸気膜崩壊機構を調べるため,高温(800℃)の銀円柱試験体(直径20mm,長さ70mm)をサブク-ル度ΔT_<sub>=0〜30Kの水中で浸漬冷却する実験を行った。最小膜沸騰温度T_<min>が高い場合(>300℃),局所的な崩壊(不整合崩壊)が伝熱面全体に伝播するが,T_<min>が高いほど蒸気膜崩壊速度vが小さくなった。この傾向は外乱によってT_<min>が高められても同様であった。そして,ΔT_<sub>が大きいほどvが大きくなった。一方、T_<min>が低い場合(<250℃),高速度ビデオカメラの1コマ(0.5ms)より速い崩壊(整合崩壊)が観測された。整合崩壊では瞬時に0.1MPa以上の鋭い圧力ピークが生じたが,不整合崩壊ではリップル状の弱い圧力変動が持続されるだけであった。 (2)つぎに,液液系における蒸気膜崩壊機構を調べるため,溶融錫またはウッドメタル(5g,初期温度T_h=400〜800℃)をサブク-ル度ΔT_<sub>=30〜80Kの水中に落下する実験を行った。溶融錫の場合,ΔT_<sub>が大きく,且つ,T_hが高いほど蒸気爆発の発生確率が大きくなり,ΔT_<sub>=80K,T_h=800℃の条件では,100%の発生確率となった。この温度条件は固液系における不整合崩壊の生じるT_<min>の場合に相当するが,液液系では,整合崩壊に似た大きな圧力波(>0.3MPa)を伴う蒸気爆発に至った。一方,ウッドメタルの場合,蒸気爆発の発生確率が小さく,また,低い圧力上昇しか生じなかった。 (3)今後,蒸気膜崩壊機構を詳細に検討するため,固液界面や液液界面の局所温度を測定するとともに,蒸気膜崩壊から蒸気爆発に至る機構を説明するため,理論モデルを開発する必要がある。
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