光触媒反応にひろく用いられる酸化チタン(IV)(TiO_2)の多くは、細孔をもたない球状の一次粒子から構成されているので、基質の大きさや形状に基づく選択性をもとめることは困難である。本研究では、光触媒能と立体選択性の両方を備えた触媒の開発をめざして、トンネルや層状構造をもつTiO_2(B)あるいはチタン酸化物を調整し、水溶液懸濁系における光触媒活性を検討した。この光触媒反応系におけるメタノールと2‐プロパノールの水素生成初速度の比を見ると、市販品は1‐2程度の比でメタノール水溶液系の方が大きいにすぎないが、層状構造をもつウロコ鉄鉱状チタン酸(HLe)は、いずれの白金原料を用いた場合でもきわめて大きい速度比を示した。この場合、2‐プロパノールはほとんど反応しないことがわかった。この系で、メタノール分子だけがこの触媒の層間に取り込まれるかどうかはまだ確認していないが、内部に侵入する分子の大きさが制限される層状構造により、反応基質の選択が行われている可能性が高い。TIB(TiO_2(B))は市販品と比べて速度が同程度であるうえに、水素生成速度比が若干大きく、アルコールの種類による選択が起こっている可能性が示された。また、HLeと同じような層状の結晶構造をもつ四チタン酸(TTA ; H_2Ti_4O_9)の場合には、塩化白金酸を用いた場合にのみ大きな選択性が得られた。ただ、市販品でも大きな選択性を示す場合がある(Mcrck)ので、その再現性についての確認が必要である。
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