これまでの研究により、TiO_2超微粒子コロイドを電気泳動することによって、陰極表面に固定したTiO_2超微粒子ゲル膜を光触媒として用い、2-プロ-パノールのアセトンへの酸化反応によって光生成する正孔を消費させると、炭酸プロピレン中でNO_3^-のアンモニアへの光還元およびCO_2のメタノールへの光還元反応が極めて高い選択性で進行することが明らかとなった。そこで本年度の研究では、二酸化炭素と種々の窒素酸化物とを同時に光還元することを試みた。CO_2とNO_3^-の両者が存在する反応溶液を用いてTiO_2超微粒子ゲル膜による光還元反応を行ったところ、CO_2とNO_3^-との結合過程の存在を意味するC-N結合を有する尿素が主生成物として得られ、メタノールとアンモニアが副生成物として得られた。還元生成物と酸化生成物であるアセトンの生成比より、1分子の尿素の生成に16電子が関与していることがわかった。NO_3^-の濃度を変化させて反応を行ったところ、濃度の増加に準じて尿素の生成量が増加したことより、同時光還元反応においてNO_3^-の還元過程が反応速度を決定しているとの示唆が得られた。そこで、NO_3^-の6電子還元生成物であるNH_2OHを窒素酸化物として用いてCO_2との同時光還元反応を行ったところ、尿素の生成速度は7倍以上となり、上記の考えを指示する結果を得た。いっぽう窒素酸化物にNOガスを用いると、尿素の生成速度はNH_2OHを用いた場合と同程度となり、かつ副生成物であるメタノールとアンモニアの生成は大きく抑えられるという結果を得ており、この方法が大気中の汚染物質であるCO_2とNOxの両者を同時に還元することによって、固体状態の尿素を得るという、環境問題の視点からも興味深いものであることがわかった。これらの反応を、通常のTiO_2バルク粒子を光触媒に用いて行っても尿素の生成は極めて少なく、半導体超微粒子の特異的な反応性が発現した結果であると言える。
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