研究概要 |
本研究では、当研究室においてこれまでに種々の海洋生物から分離した特異な生物活性を有する新規化合物の中で、次の4種の天然分子について不斉炭素の立体化学の決定と標的分子の特定、活性発現機構と機能の解明に関する研究を以下の通り行った。 1)theonella属海綿から分離したマクロリドTheonezolide Aはウサギ血小板の形態変化を誘起する特異な作用をもつ。この化合物に含まれる絶対配置未決定の22個の不斉炭素のうち、C4-C17部分に含まれる2組の1,3-ジオールの立体化学を解明する目的でモデル化合物の合成を行い、その1,3-ジオールはいずれもシン配置であることを明らかにした。2)別種のTheonella属海綿から分離した環状ペプチドKeramamide Bは、多くの異常アミノ酸から構成され、低濃度で好中球における活性酸素の生成を抑制する作用をもつ。今回、本海綿よりマイナ-成分として新規環状ペプチド4種Keramamide E,G,H,およびJを分離し、構造決定を行った。これらは化学構造と活性酸素生成抑制作用との関連を検討する上で有用な化合物である。3)Eudistoma属ホヤ由来のβ-カルボリンアルカロイドに関する構造活性相関の結果開発した合成化合物MSBDは強力な筋小胞体Ca遊離促進作用をもつ。今回、その標的蛋白分子を特定するためのリガンド(フォトアフィニティラベルおよびアフィニティクロマト)の調製を目的として、βカルボリン骨格へのスペーサーの導入を検討した。9位にアルキル鎖を伸長した化合物をCa遊離促進作用が減少したため、現在3位へのスペーサーの導入を検討している。4)Amphidinium属の渦鞭毛藻より分離した27員環マクロリドAmphidinolide Lは腫瘍細胞に対して顕著な殺細胞活性を示す。この化合物のC16-C20フラグメントに含まれる3個の不斉炭素の立体化学を解明する目的で、C16-C26フラグメントの合成研究を行い、一つの立体異性体の炭素骨格の構築に成功した。
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