本研究では、酵素触媒重合という高分子合成の新手法を用いて天然型、非天然型の多糖・オリゴ糖を、完全位置ならびに立体選択的にコントロールしながら合成することを目的とした。また、重合系と超分子形成系を関連づけながら重合反応の解析を試みた。 (1)非天然型多糖・オリゴ糖の酵素触媒重合による合成 グルコース誘導体とN-アセチルグルコサミンの縮合により二糖を合成し、引き続き1位のフッ素化により新規二糖モノマーを合成した。これにセルラーゼ触媒をアセトニトリル一酢酸緩衝液中で作用させたところ、速やかに重合が進行し、グルコースとN-アセチルグルコサミンを交互に有する非天然型オリゴ糖が生成することを見出した。 新規モノマーとして6位メチル化セロビオース、キシロビオースについて、そのフッ化物を調製し、それらをセルラーゼ触媒を用いて重合させることにより、非天然型多糖を位置および立体選択的に合成した。 (2)多糖合成における超構造の制御 すでにセルロース酵素合成系の透過型電子顕微鏡および電子線回折による解析について報告している。今回、上述のフッ化キシロビオシルの酵素触媒重合系を電子顕微鏡で観察し、重合条件と生成キシランモルホロジーの関係を検討した。その結果、重合初期の反応系において6角形状の結晶を見出した。現在生成した多糖結晶の電子線回折による結晶構造の詳細な解析を進めている。
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