研究概要 |
生物有機化学的手法で、糖とタンパク質間の分子認識機構を解明する一環として、糖関連酵素の基質アナログおよび糖鎖を認識するタンパク質の人工リガンドの合成を行った。糖転移酵素の1つであるβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalTase)の供与体であるUDP-ガラクトースと受容体であるN-アセチル-β-グルコサミニドをメチレンで架橋した二基質複合体アナログを設計し、その合成を完成した。また、そのものが非常に強いGalTase阻害活性(Ki=1.3μM)を示すという、興味ある事実を見い出した。このことによりGalTaseによる糖転移の際の両基質の空間的配置に関する情報とともに、GalTaseの活性部位を探るための基質アナログを設計するための知見も得られた。 高次の糖鎖構造認識を検証するプローブとして、血液型関連抗原であるH type2およびLe^X三糖のフコース残基を5-チオフコースに置換した三糖アナログを、共通の合成中間体である1,6-アンヒドロ-2-アジド-2-デオキシ-4-O-(β-ガラクトシル)グルコース誘導体を経由して合成した。剛性したH type2三糖アナログは、H type2三糖を認識するレクチンには認識されず抗体に強く認識されるという、その普遍性に関して今後の検討に興味のもたれる事実を見い出した。
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