赤、紫から、青色にいたる多彩な花の色はそのほとんどがアントシアニンによる。アントシアニンの花色変異と安定化の機能は色素分子が非共有結合性の弱い分子間相互作用により会合することによりはじめて獲得される。さらに、これらの分子会合は規則的なキラルなもので、超分子形成には、非常に厳密な構造認識がなされている。本研究では、ヤグルマギク(Centaurea cyanus)の青色花弁色素、プロトシアニンの精密な会合構造の解明を行ない、プロトシアニンがコンメリニンと同様の超分子色素であることと青色発色の機構を解明した。 プロトシアニンが円二色性において可視部に非常に強い励起子型の負のコットンを示すことや、電気泳動、ESI-MSによる質量分析等から、色素の組成を決定したと同時にコンメリニンと極めて類似の構造を取り、金属イオンがB環3'4'位のortho-ジヒドロキシル基に配位していることを決定した。 鉄イオンを3価のアルミニウムイオンに変えたプロトシアニン様錯体で各種の1次元、2次元核磁気共鳴スペクトルを測定してシグナルを帰属した結果、プロトシアニンはC3軸を持つcyclo-(Mafl 1-Sucy 1-Sucy 2-Mafl 2-)_3の二核錯体、即ち、コンメリニン中のMg^<2+>イオンのひとつが3価鉄イオンに置換されたものに相当することを明らかにした。 さらに、青色発色が、シアニジン母核を有するアントシアニンから3価鉄イオンへの電荷移動による新しいものであることを解明した。
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