研究概要 |
プロテインキナーゼC(PKC)は、細胞内情報伝達におけるキ-エンザイムであると同時に、強力な発癌プロモーター・ホルボールエステルの主要なターゲットとしても注目されている。ホルボールエステルはリン脂質存在下、PKCの調節領域に結合することが知られている。また最近、リン脂質非存在下におけるPKC調節領域の一部と水溶性ホルボールエステルとの複合体の結晶構造も報告された。しかしながら、リン脂質存在下におけるホルボールエステルとPKC複合体の三次元構造は依然として不明な点が多い。本研究はこの点を明らかにするため、新しいタイプの光反応性ホルボールエステルを複数合成し、PKCモデルペプチドに対する光アフィニティーラベリングを行った。 昨年、両親媒体ホルボールエステルの疎水性領域である12位、13位とともに、親水性領域である3位にジアゾアセチル基を有する新しい光反応性プローブ3種(1‐3)およびラット脳PKCγの101から151番目のアミノ酸からなるモデルペプチド(γ‐Cys2)を合成した。今年度はまずγ‐Cys2に対するプローブの結合能を測定したところ、3はphorbol 12,13‐dibutyrateの約1/100、1および2はともに約1/10という比較的高い結合能を示した。そこで、プローブをトリチウム標識し、γ‐Cys2に対する光アフィニティーラベリングを行った。その結果、12位あるいは13位にジアゾアセチル基を導入した1および2が、γ-Cys2を特異的に光標識できることが明らかになった。それに対して、3位に光反応性基を有する3を用いた実験では、γ-Cys2よりもホスファチジルセリンに対する標識がはるかに優先した。プローブ1および2によって標識されたγ-Cys2のアミノ酸残基の同定が今後の課題である。
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