我々は、シアル酸含有糖脂質とリポソームからなる超分子構造体を用い、糖鎖のリポソーム表面からの距離、配列状態および密度などを考慮した人工細胞リポソームを調整し、実細胞との相互作用を通じて細胞表層での糖鎖の認識機能について検討した。 シアル酸の数の異なる種々のガングリオシド脂質をリポソームに組み込み、免疫細胞特にT細胞との相互作用を調べた。細胞との相互作用は、共焦点レーザー蛍光顕微鏡により、個々の細胞内カルシウム濃度の増加を追跡することにより評価した。その結果、ある種のポリシアロガングリオシド(PG)含有リポソームが、T細胞を強く刺激することを見いだした。この刺激は、同一濃度条件下、PGのみを添加しても見られない。また、リポソーム表面の糖鎖密度を変化させ、活性化の程度を調べたところ、6-10mol%の糖鎖密度領域で閾値がみられた。これらの事から、リポソーム表面での糖鎖の集積効果(糖鎖のクラスター効果)の重要性が示唆された。 次に、ガングリオシド含有リポソームによるこれらの現象のメカニズム解明の一助として、ガングリオシドのシアル酸残基に注目したモデル脂質として、スペーサー長の異なる2種の人工シアロ脂質sialylcholesterol (SC2、SC6)を合成紙、その含有リポソームのT細胞刺激能を調べた。その結果、2種類のsialylchoesterol含有リポソームは共にT細胞を強く刺激した。特にSC6含有リポソームにおいては天然のガングリオシド含有リポソームをも凌ぐ強いT細胞活性化能を示した。これらシアル酸含有リポソームのT細胞刺激の機構の詳細を現在検討している。
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