研究概要 |
シリル化試薬であるN-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MTSTFA)は多糖の6位硫酸基を特異的に脱離するのに有効である。今年度は、ヘバリンを脱硫酸化し、その繊維芽細胞増殖因子(FGF-2)との相互作用の変化を検討した。また種々の方法を組み合わせてヘパリンを修飾し、各種タンパク質との相互作用の変化を検討した。 FGFはヘパリンと結合しFGF受容体と相互作用して活性を発現する。この過程での6硫酸基の関与を検討した。ヘパリンとMTSTFAの反応条件を検討し、種々の脱6硫酸化率のヘパリンを得た。これらとFGF-2とのアフィニティーを測定した結果よりヘパリンとFGF-2の結合には6位硫酸基を関与していないことが示唆された。一方、内在性ヘパリン硫酸鎖の合成を阻害し増殖能力を失った細胞にFGF-2と各種脱6硫酸化率のヘパリンを添加し、増殖能力の回復を観察した結果よりFGF-2がヘパリンと結合して活性を発現するには少量の6位硫基が必要であると示唆された。この結果は、ヘパリンの活性発現の際FGF-FGF受容体-ヘパリンの3者複合体が形成されるという仮説に一致する。即ち、FGF-2とヘパリンの結合には6位硫酸基は不要であるが、受容体とヘパリンの結合にはこれが必要であると考えられた。 ヘパリンは多種のタンパク質と相互作用し幅広い活性を示す。MTSTFA処理や他の位置特異的脱硫酸化方を組み合わせ、2,N-脱硫酸化-Nアセチル化ヘパリン、2,6-脱硫酸化ヘパリン、6脱硫酸化ヘパリン、および2脱硫酸化ヘパリンを調製し、これらをリガンドとしたアフィニティーカラムを作成した。血漿タンパク質をこれらにより分画し、各画分をSDS電気泳動により分析した。泳動パターンはそれぞれの画分により異なり、各カラムで異なったタンパク質が親和性を示したと考えられた。これより、種々の部位特異的脱硫酸化を組み合わせて特定のタンパク質のみに親和性を示すヘパリン調製される可能性が示唆された。
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