研究概要 |
分化した臓器や器官を持たない水棲生物の海綿類が代謝し生産する物質の中には、陸上の動植物由来の天然物質とは異質の新規で多彩な化学構造を有し、新しいタイプの超分子形成により機能発現する生物活性物質の存在が期待される。私達も、海洋生物由来の新規生物活性物質の探索研究を続けており、以下に示す沖縄サンゴ礁で採取した2種の海綿類から、微小管系に作用し極めて強力な細胞毒性物質を見出だしている。 1.海綿Hyrtios altumから、著しく強力な細胞毒性活性(IC_<50>0.01ng/ml(KB))を示す4種の微量マクロリド類altohyrtins A,B,C,およびdesacetylaltohyrtin Aを見出だしている。ハロゲン原子と2組のスピロ環を有する新しいタイプのマクロリドaltohyrtin類の立体構造をCD励起子キラリティ法および6個の2級水酸基への改良Mosher法を拡大適用することにより推定しているが、さらに、シミュレーテッドアニーリング法による分子動力学計算で、altohyrtin類の構造確認を行なうととものコンホメーション解析を進めている。 2.海綿Dysidea arenariaからKB cellに対しIC_<50>値が5pg/mlの著しく強力な細胞毒性を示すデプシペプチドarenastatin Aを見出し、arenastatin Aの全合成を達成している。さらに、arenastatin Aの化学構造と細胞毒性活性の相関を調べる目的で、各不斉炭素の立体異性体を合成した。その結果、各異性体は細胞毒性活性をほとんど示さず、arenastatin Aの活性発現には、天然型の立体配置が必須であることが判明した。
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