核酸(DNAあるいはRNA)はデオキシリボヌクレオシド三りん酸あるいはリボヌクレオシド三りん酸を基質として鋳型DNA存在下、含亜鉛酵素である核酸合成酵素の触媒作用で縮重合して生成する。我々はこの核酸合成酵素反応にヒントを得てZn^<2+>、Pb^<2+>さらにはUO_2^<2+>イオンを触媒として、ヌクレオシド-5'-りん酸イミダゾリド(ImpN)を基質に用いて中性水溶液中で縮重合反応を行い、最長16量体までのオリゴヌクレオチドを生成することを見出し報告した。特にUO_2^<2+>イオンはこのオリゴヌクレオチド形成反応に対し、触媒活性が高いことが認められた。希土類金属イオンは周期律表でUが属するアクチニド系列金属の上に属し、f電子系で配位数が多い。また比較的ハードな金属イオンで配位した水、水酸基の解離を促進すると考えられる。そこでウラニルイオンと同様にヌクレオチド間結合形成に対し触媒作用を持ち、異なった選択性を持つことが期待される。希土類金属イオン、希土類金属錯体による核酸(DNAおよびRNA)の加水分解反応の研究が小宮山らにより精力的になされているが核酸の加水分解と逆反応であるヌクレオチド間結合形成反応については全く知られていない。本研究においては種々の希土類金属イオンを用いて活性化ヌクレオチド(ImpN)との錯体形成を経由した中性水溶液中でのオリゴヌクレオチド生成反応を検討した。 ImpAのりん酸イミダゾリド結合は反応性に富み、中性水溶液中で加水分解しアデニル酸(pA)が生成する。触媒として希土類金属イオンを加えると4量体までのオリゴアデニル酸の生成が認められた。生成したオリゴアデニル酸は主として2'-5'結合を有していた。Lu^<3+>を触媒に用いたときにはオリゴアデニル酸の収率は49%に達した。各希土類金属イオンの触媒活性はほぼ原子番号の順に高くなり、None<Nd^<3+><La^<3+><Ce^<3+><Pr^<3+><Sm^<3+><Gd^<3+><Tb^<3+><Py^<3+><Ho^<3+><Er^<3+><Yb^<3+><Lu^<3+>の順であった。 また希土類錯体をプローブに用いる核酸の標識化の研究を進めた。
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