研究概要 |
本研究では、希土類元素としてイットリウム(Y)とイッテルビウム(Yb)を対象に、これらの元素を菌体内に集積する微生物のスクリーニングを試みた。その結果、これらの両元素を集積可能な低栄養性細菌や放射菌を分離することに成功、分離細菌の培養特性並びにこれらの細菌の生理代謝と希土類元素との関わりについて検討を加えた。 1.イットリウム集積細菌 希釈(1/100)肉汁培地を用いて予め分離した低栄養性細菌の中から、Yを減少させた7菌株を選抜した。分離した7菌株中、1菌株を除いていずれも良好なY減少を示した。特に高いY集積能を示した3菌株について同定した結果、Variovorax paradoxus(1菌株)とComamonas acidovorans(2菌株)に属する事がわかった。これらの7菌株の希土類元素に対する集積スペクトルを調べたところ、軽希土類及び中希土類の各元素を良好に集積するが、重希土類については集積しない事を明らかにした。また、V.paradoxusは細胞表層、菌体内及び菌体外分泌物にYを蓄積している事を明らかにした。 2.イッテルビウム集積細菌 同様のスクリーニング系を用い、重希土類元素のひとつであるYbを集積する細菌5菌株を分離した。これらの菌株の内、放線菌に属する1菌株がYbの存在下でのみ赤紫色色素を生産することを発見、興味がもたれた。この色素生産は、Mg,Cr,Zn,Cd等では観察されず他の希土類元素によっても生産されることを認めた。このように、微生物の生理機能発現に希土類元素が大きな影響を及ぼす事の発見は希土類元素と微生物の関わりを研究する上で極めて貴重な知見と言えよう。
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